MACHIBIYAセミナー

【開催報告】「富裕層観光の最前線!世界が魅了した『ニセコ』の今」

こんにちは!MACHIBIYA編集部です!

2023年7月18日に第90回MACHIBIYAセミナーを開催いたしました!

 

今回のテーマは「富裕層観光の最前線!世界が魅了した『ニセコ』の今でした。

 

講師には、リゾートプロパティージャパン株式会社にてインバウンド事業のコンサル・講演活動に尽力されている大久保実氏をお招きし、日本の「富裕層観光」の先駆けであるニセコエリアの事例について講演していただきました!

大久保実氏プロフィール

北海道出身ニセコ町在住。2003年、ニセコエリアで初となるコンドミニアム開発事業に参画。海外からの投資受け入れと観光産業の組み合わせで、インバウンドの受け入れを成功させ、地域を飛躍的に発展。土地の仕入れ、企画、販売、管理、運営などスタッフの8割が外国人の環境の中で全般に関わり多様な経験を積み重ねる。

現在はこれまでの20年以上に渡る経験をもとに、ニセコをベースに北海道、長野、九州など全国の観光地・リゾート地にて観光不動産開発アドバイザー、ワイナリー・ウイスキーなどの醸造所・蒸留所コンサル活動をしている。また、国土交通省北海道運輸局より観光アクティビストの任命を受け、大学、行政、各種団体、経営塾などで講演も行なっている。

 

こんなセミナーでした!

POINT1:ニセコに世界の富裕層が魅了し集まるまでの背景

POINT2:「富裕層観光」を受け入れるにあたり重要な観点

POINT3:世界のニセコのこれからの可能性に関して

POINT4:ニセコの事例から全国の観光地にお伝えしたいこと

 

POINT1:ニセコに世界の富裕層が魅了し集まるまでの背景

◼️ニセコエリアの概要

ニセコエリアは新千歳空港から車で1時間半〜2時間程の場所にある。周辺には大きく分けて4つのスキー場が点在しており、このエリア一帯をニセコエリアと呼ぶ。国際空港から2時間圏内で、標高が約1300mと非常に低いのにもかかわらず、柔らかい雪がシーズン中ずっと存在するところに、外国人観光客から人気を博す理由があるといえる。

 

◼️ニセコエリア発展の歴史

1960年〜70年代にかけて、当時林業が盛んだった地域をスキー場に改める取り組みが行われた。1980〜90年代には、全国的なペンションブームがニセコエリアにまで波及し、道外の人々がペンションを開業しに来訪するようになった。2000年代以降は、オーストラリア人を中心に外国人のスキー客が増加し、不動産投資事業に移っていく。特に、大久保氏は2003年から分譲型コンドミニアム事業に携わり、事業の拡大につれて宿泊者が拡大した。2010年以降は、香港やシンガポールなどアジアからの観光客にプロモーションを展開している。コロナ禍を経て、ニセコエリアの観光客は徐々に回復しつつある。

 

POINT2:「富裕層観光」を受け入れるにあたり重要な観点

◼️ニセコエリアのコンドミニアム事業

海外では、オーナーが不動産を利用しないときは一般客に貸出するコンドミニアムの仕組みがポピュラーになっている。ニセコエリアではこの仕組みをいち早く導入し、海外の富裕層が物件を建てて、地元の不動産会社が運用する形をとっている。近年は、分譲のマンション型ホテル・別荘が大型化しており、金額も右肩上がりの傾向にある。

 

◼️海外市場との比較

大久保氏によると、10億〜30億円規模の別荘は世界的によく見られるものであるという。そのため、これよりも低い価格帯での提供が行われているニセコエリアのコンドミニアム事業は、まだまだ発展する余地がある。また、不動産的な観点からも、ニセコエリアにおける1平米あたりの不動産価格は世界のスキーリゾート地のなかで30位台であることから、同様に成長の余地があるといえよう。

 

◼️富裕層による口コミ

実際に地域を訪れた富裕層による口コミは、新しい顧客を獲得する手段の1つになる。例えば、雑誌「MONOCLE」を編集するタイラー・ブリュレ氏が、2010年にニセコエリアを取り上げたことで、現地の観光客増加の促進につながったと大久保氏は語る。また、会員制不動産会社「CANDY×CANDY」において、富裕層が最近不動産を買った土地としてニセコエリアがリストアップされたことで、ニセコエリアの良さがさらに他の富裕層に伝わることになったという。

 

POINT3:世界のニセコのこれからの可能性に関して

◼️ニセコエリアの今後

ニセコエリアには現在、ヒルトンホテルやパークハイアットホテルなど、富裕層を対象とした数々のホテルが存在する。そして、今後も世界の5つ星以上のホテルが続々と進出を表明しており、さらなる発展が見込まれる。その下支えは、新千歳空港の国際線の拡張や、ニセコエリア付近にアクセス可能な高速道路および新幹線の整備など、交通インフラの拡充が予定されていることにある。

 

◼️旅行トレンドからみたニセコのポジション

日本にはまだ3%しかいないスポーツ・娯楽産業のマーケットを推進していく(国内ではニセコが先進地としてポジションを築けた)。海外旅行客にとって日本の魅力は非常に上がって来ている。宿泊においても全国的に高級なホテル・旅館の伸びがあり、ニセコでも開発が進んでいる。今までは誰にでも合うフリーサイズの旅が主流だったが、価値観が多様化し、子供にグローバル市民の感覚を身に付けさせるための旅行需要(例:プロのスキー選手に直接スキーを教えて欲しい)も増えてきている。

POINT4:ニセコの事例から全国の観光地にお伝えしたいこと

◼️富裕層戦略

VIP、VVIP背略

ニセコ地域が富裕層向けからファミリー向け、バックパッカー向けのさまざまなジャンルの受け入れ皿を作る(宿、飲食等)。ただし、いきなり富裕層を受け入れるのが難しければ、今ある宿や空間をまずは1つから富裕層向けに変えて、受け皿を作ってみる。それすらも難しければ富裕層戦略はせずに、今来ている観光客の顧客満足度をあげることに徹する。

 

◼️感情論と機能論

外部の人が「〜すればうまくいく」と機能的に考えても、地元の人は感情論で話す場合もあり、この噛み合わないものが結果的にハレーションを起こす原因となり、地域に根付かない結果となってしまう。地域の皆さんに尊敬の念を抱きながら上手に感情論と機能論を切り分けて進めていくと、地域と一緒に進めることができる。

 

質疑応答

Q.ニセコのバックパッカー向け宿の価格帯は?

 

A.一番安くても3,500円。平均6,000円ほど。海外旅行客はアジアで4〜5泊、ニュージーランドで1週間〜2週間、日本に滑りに来ている人は2ヶ月ほど滞在しているので、安い宿を借りてそこを拠点にしている。最近はキャンピングカーで日本を巡る人も。

ただし安いと、ターゲットからずれたお客さんも来てしまうので、どこにポリシーをおき、事前情報を伝えるかが重要かと考えている。

 

Q.富裕層が文化体験や地域芸能を実体験するようなことがあるか?

A.「鑑賞してもらう体験」と「一緒にやってもらう体験」の2パターンある。アジアはショーのようにみてもらうことが多い。欧米豪や富裕層は時間をかけてみるため、鑑賞してもらったのちに長い説明+少し体験をしてもらうことが多い。そこには「何を伝えたいのか」という提供側の強いポリシーが重要(例:アイヌの文化があるが、良かれと思った文化体験が、文化の違いから相手の感情を逆撫でしてしまうようなこともある)。

 

Q.ニセコの機能的・感情的機能の衝突をどのように乗り越えたか

A.ニセコエリアは感情論として「どんな建物が立つかわからない」「既存の顧客を奪われるのではないか」という心配があった。まずは住民説明会を何度もすることで、コンドミニアム事業は今まで来ていなかった層を狙おうとしていること(既存の顧客とは違う)を理解してもらえた。また、観光協会と行政と景観条例を作り、建物の建築をマネジメントすることができるようになった。

 

<MACHIBIYAインタビュー>

  1. おすすめの本は?
  2. 宇宙の本。宇宙まで俯瞰して見ると、仕事で嫌なことを忘れることができる。

 

  1. 座右の銘
  2. 「できる、できる、自分ならできる」

 「積極性は常に勝利を勝ち取ることができる」

 ⇨自分が一歩を踏み出すときに思い出す、プロジェクトで関わった冒険家の言葉

 

Q.ニセコ以外で好きなまちは?

A.仕事では大分や長野、北海道で関わっている。正直、どこも地域的には尻込みしてしまう地域が多い。泥臭く、熱量がある仕事でないと成り立たない仕事。当初は大久保さんも多くのメディアに「乱開発事業者」に叩かれたこともあったニセコでは逆風からのスタートだったので、地域の入り込みの苦労を経験したが、それが成功したときには大きなやりがい・成就になると思う。

 

まとめ

大久保様の講演を受けて、参加者からは「海外の視点をニセコの観光に取り入れていることが非常に勉強になりました。」「富裕層マーケット=ニセコというイメージはあるものの、実態を知る機会がなかったので、とても楽しい時間でした。」「とても興味深いお話でした。実践を伴うのでさらに理解が深まりました。」といった好評をいただきました。

 

私自身、日本における富裕層観光の可能性については興味があったので、ニセコエリアでのインバウンドの受入を成し遂げられた大久保様による富裕層観光の解説は、大変勉強になるものだったと感じています。

 

今回の講演を快諾してくださった大久保様、そして参加者の皆様、本当にありがとうございました!

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