MACHIBIYAセミナー

【開催報告】『世界トップ100のニセコに学ぶ持続的な地域観光とは?』

こんにちは!MACHIBIYA編集部です!
2022年4月14日に、第86回MACHIBIYAセミナーを開催いたしました!

今回のテーマは『世界トップ100のニセコに学ぶ持続的な地域観光とは?』でした。

講師に、世界トップ100に選ばれたニセコ町で、以前商工観光課の一員として持続可能な観光を推進していらっしゃった高橋葉子様をお招きして、持続可能な地域観光についてご講演いただきました。

 

高橋 葉子様プロフィール

神奈川県出身。建築設計事務所勤務を経て、観光分野のシンクタンクである公益財団法人日本交通公社に在籍、全国各地の地域振興に携わる。その後、デロイトトーマツコンサルティング合同会社にて地方創生チー ムの立ち上げメンバーとして、全国の地方自治体における地方創生プロジェクトの実行支援に関与。観光推進の中心となる行政に興味を持ち、2019年4 月からは、北海道ニセコ町商工観光課の職員として、持続可能な観光を推進。「持続可能な観光地 TOP100」「 UNWTO ベストツーリズムビレッジ」への選定に貢献。2022年4月に観光コンサルタントとして独立(個人事業主)。

こんなセミナーでした!

POINT1:持続可能な観光とは?
POINT2:ニセコ町での観光の取り組み
POINT3:観光に対する町民の意識
POINT4:今後の展望

POINT1 持続可能な観光とは?

■持続可能な観光の定義について
UNWTO(国連世界観光機関)は、持続可能な観光を、「訪問客、業界、環境及び訪問客を受け入れるコミュニティーのニーズに対応しつつ、現在および将来の経済、社会、環境への影響を十分に考慮する観光」と定義している。

■日本のサステイナブルツーリズムの遅れに対する危機感
国際的には「サスティナブルツーリズムに取り組んでいない観光地は10年後には淘汰される」とも言われるほど、海外市場においてサステイナブルツーリズムのニーズが高まっている。
Booking.comの調査によると、世界の86%の人がサスティナブルツーリズムを希望している。一方でこのアンケートで、日本人がサスティナブルツーリズムにあまり関心がないことも明らかになった。

世界に比べ、日本ではまだほとんど普及していない持続可能な観光。世界ですでに作られていた「持続可能な観光ガイドライン」が日本版で開発されたのも、令和2年6月だった。

POINT2 ニセコ町での観光の取り組み

ニセコ町で持続可能な観光に取り組み始めたのは、令和元年度北海道運輸局「国際的な観光指標の導入を踏まえた持続可能な観光の推進に関する実証事業」に受入地域として参画したのが始まりだった。その後、令和2年度には観光庁の「日本版持続可能な観光ガイドラインを活用したモデル事業」のモデル地区に選定され、持続可能な観光地トップ100に選出。そして、令和3年度には、UNWTOベストツーリズムビレッジに選定された。

現在のニセコ町は、日本版持続可能な観光ガイドラインに沿って、各項目をクリアできるように取り組んでいる。そもそも、「日本版持続可能な観光のガイドライン」とは、観光庁が各地方自治体や観光地域づくり法人(DMO)が持続可能な観光地マネジメントを行うことができるようにと、国際基準に準拠して開発したものである。4つの分野、合計38の大項目・174の小項目が設定されており、これを満たすように各地域は取り組んでいく必要がある。

現段階として、観光のマネジメントや旅行者に関する調査、環境への配慮は行き届いているが、事業者や旅行者に対しての周知が足りていない。令和4年度は、この部分に力を入れて取り組んでいくそうだ。

高橋様は、持続可能な観光トップ100選に応募するメリットは、自分たちの地域の分析ができることだとおっしゃっていた。分析をすることによって、現時点でこの地域ができていること、できていないことを可視化することができる。これによってより良い観光地を作ることができるという。

POINT3 観光に対する町民の意識

町民の観光に対する意識調査によると、観光に対する肯定的な考えを持っている人は町民の約8.5割。観光が、ニセコ町の発展に重要な役割を果たしていると思っている人は多い。一方で、観光の発展が自分の生活の豊かさに関係するかという質問に対しては、肯定的な回答は4割、否定的な回答は3割と意見が分かれた。高橋様は予想外の結果に対して、町民へ観光がニセコ町にどのような波及効果をもたらすのかをもっと見せる必要があると感じたという。

ニセコ町では、一見観光に対する肯定的な意見が多いが、もちろん観光に対して否定的な考えを持つ町民もいる。観光客がたくさん来ることによって、物価が上がったり、景観や自然環境が損なわれたりするので、町民に特に恩恵がないのではないかという意見もある。

POINT4 今後の展望

現在挙げられる、ニセコ町の観光の課題は以下の5つである。

① 観光需要の季節変動
② 観光経済波及効果の向上
③ 二次交通(域内交通)の機能強化
④ 国際的な競争力の向上
⑤ 町民の観光に対するコミットメント(理解と参画)

ニセコ町は、これらを解決していくことによって、「町民や観光客から信頼される、持続可能な国際リゾート」を目指している。具体的な将来像としては、オフシーズンのない通年型の観光、ニセコ町ならではの観光体験ができる、町民が観光の恩恵を実感できるなどである。観光は、視野の広い産業であり、観光事業者だけでなく、町民を始め多様な主体が互い連携・協同しながら、推進を図っていくことが大切である。

質疑応答

Q1. 観光客側から見て、持続可能な観光を実感しやすいものはどのようなものか?
A1. 一般論としては、カーボンオフセットが比較的分かりやすい。カーボンオフセットを知っていただく機会を設けることはいいことだと思う。

※カーボンオフセットについて
カーボン・オフセットとは、日常生活や経済活動において避けることができないCO2等の温室効果ガスの排出について、できるだけ排出量が減るよう削減努力を行い、どうしても排出される温室効果ガスについて、排出量に見合った温室効果ガスの削減活動に投資すること等により、排出される温室効果ガスを埋め合わせるという考え方。
(参考文献https://www.env.go.jp/earth/ondanka/mechanism/carbon_offset.html)

Q2. 外国の方が旅先を選ぶ基準は何か?
また、どのような情報を旅行者に届けるのが良いのか?
A2. ヨーロッパでは、一番大きな旅行会社が、持続可能な基準を満たしていないと掲載しないと掲げている。このような基準が、日本でも今後は当たり前になってくると思う。持続可能な取り組みをしていることは、時にはメリットになるが、時にはデメリットにもなるので、どこまでの情報を提示するのかは難しい。例えば、環境のために、過度なエアコンの使用や連泊する方へのシーツの交換はしないと謳っているホテルがあったとすると、環境に配慮しているという好印象を持つお客様もいるが、自分たちが快適に過ごすための最善ではないということであまり良い印象を持たないお客様もいる。

Q3. ニセコ町でコンサルティングをやっているときに、やりがいを感じたタイミングは?
A3. 必ず成果を出すということを心掛けているので、成果ができたときはやりがいを感じる。また、仕事面も生活面も含めて、地方に住みながら仕事をするということに、とてもメリットを感じた。

MACHIBIYAインタビュー

高橋様のおすすめの情報源は、日本交通公社の「旅の図書館」
高橋様の座右の銘は、「行った先で楽しむこと」

まとめ

これからの時代において、持続可能な観光というのは、とても大きな役割を果たしていくであろうことを実感することができるセミナーでした。実際に持続可能な観光に取り組んでいらっしゃった高橋様だからこそ、私たちに持続可能な観光の大切さを教えていただくことができたと思います。今回の講演をしてくださった高橋様、そして参加者の皆様、本当にありがとうございました。

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