MACHIBIYAセミナー

【開催報告】『国際基準を活用した持続可能な観光の実務について』

こんにちは!MACHIBIYA編集部です!

2023年6月8日に第89回MACHIBIYAセミナーを開催いたしました!

今回のテーマは『国際基準を活用した持続可能な観光の実務について』でした。

講師には、株式会社かまいしDMCにて持続観光な観光の推進に携わられた久保竜太氏をお招きし、「サステナビリティ」という言葉の適切な捉え方や、岩手県釜石市における持続可能な観光に向けた取り組みについて講演していただきました!

 

久保竜太氏プロフィール

岩手県釜石市出身。東日本大震災をきっかけに釜石にUターン。持続可能な観光の推進に携わり、6度の国際的な賞の受賞へ貢献。2023年4月より一般社団法人サステナビリティ・コーディネーター協会の設立に携わり、業務執行理事を務める。

こんなセミナーでした!

POINT1:釜石市における取り組み事例

POINT2:持続可能な観光についての国際基準

POINT3:「サステナビリティ」という言葉の捉え方

 

POINT1:釜石市における取り組み事例

◼️東日本大震災の影響

2011年3月に発生した東日本大震災で、岩手県釜石市は死者・行方不明者1000人以上という甚大な人的被害を受けた。

震災の影響で、地域づくりに取り組むあらゆるセクターの間においてコミュニケーションのミスマッチが起きた。精神的な距離感が広がり、まちづくりに隙間が生じた結果、復興が遅れる。久保氏は、このような状況を課題に感じていた。

 

◼️復興への挑戦

釜石市では課題の打破のために、半官半民の復興コーディネーターが導入された。生まれ育った地の復興に携わりたいと考えた久保氏は、第5期で復興コーディネーターに着任し、そのタイミングで釜石市にUターンした。そして、釜石市の観光セクションにコーディネーターとして入り、震災後初となる観光振興ビジョンの策定に関わった。

◼️持続可能な観光に向けて

釜石市観光振興ビジョンの目標は、市民が釜石市に住む誇りを取り戻すこと。その中心となる考え方こそが、サステナブルツーリズムであった。サステナブルツーリズムの国際認証の取得を掲げたうえで、マーケティングとマネジメントの強化にも取り組むことで、釜石市民が観光を通じて釜石の地に誇りを持つようになっていくのではないかと考えた。

そして、この取り組みを現場で推進しているのが株式会社かまいしDMCである。久保氏は当組織について、「多様なバックグラウンドを持つ素晴らしい人材に恵まれた」と語っていた。結果として、釜石市は2022年までに「世界の持続可能な観光地100選」に5回選出され、「Green Destinations Award」シルバー賞を受賞するという輝かしい成果を収めた。

POINT2:持続可能な観光についての国際基準

◼️「持続可能な観光」の解釈をめぐる問題意識

久保氏は「持続可能な観光」という言葉の解釈が孕む問題について、

1.「持続可能な観光」が、単なるツアーや体験プログラムの問題として捉えられている

2.「持続可能な観光」という広い意味合いを持つ言葉だけが広がっていき、それが何を指すのか不明確になっている

3.「持続可能」という言葉を一般的な意味合いで捉えており、現代的な意味を持つ「サステナビリティ」と混同している

の3点を提起した。

◼️「持続可能な観光」とは何か

「持続可能な観光」については、「訪問客、産業、環境、受け入れ地域の需要に適合しつつ、現在と未来の環境、社会文化、経済への影響に十分に配慮した観光」というUNWTOの定義がある。久保氏は、この定義の解像度を高めたうえで、「持続可能な観光」とは「経済、環境、社会文化がバランスよく保たれている状態」であるとした。

◼️「持続可能な観光」の国際基準

「持続可能な観光」の国際的な統一基準として、グローバル・サステナブル・ツーリズム協議会(GSTC)開発のGSTC基準というものが存在する。観光産業向けのGSTC-Iと観光地向けのGSTC-D向けの2種類があり、日本でもGSTC-Dをベースに「日本版持続可能な観光ガイドライン(JSTS-D)」が策定された。

◼️「持続可能な観光」の認証制度

GSTC基準に基づいた「持続可能な観光」の認証は、GSTCにより評価基準が認められたGSTC認証機関が行うことになっている。

現在、日本でも広がってきているのは、グリーン・デスティネーションズ(GD)による評価である。6つの主要テーマから観光地のサステナビリティを評価する仕組みになっており、達成の度合いによって段階的に格付けを行う制度がある。釜石市は2022年にシルバー賞を受賞した。「他の地域でも選出される余地は十分にある」と語る久保氏。様々な地域において、GD選出による「持続可能な観光」の輪が広がることを期待したい。

 

POINT3:「サステナビリティ」という言葉の捉え方

◼️「サステナビリティ」の実務的な捉え方

久保氏は、「『サステナビリティ』とはコンプライアンスである」と力強く述べていた。抽象的な概念や理想論で捉えるものではなく、マネジメントのレベルで検討するものであり、専門的な職務者がいないと実務として実装していかないという。

その上で、持続可能な観光地に必要な条件として、

1.サステナビリティに関連したコンプライアンスの諸要件に対して高いレベルで対応すること

2.コンプライアンスに適合していることを適切な情報で証明していること

の2点を提示した。

 

◼️「サステナビリティ」の信頼性

「サステナビリティ」に関する情報は信頼性が肝心だと考える久保氏は、信頼性の担保にあたって認証・表彰ラベルにその必要性を見出していた。ラベルの取得によって、様々なステークホルダーに対して、第三者保証によりサステナビリティへの取り組みの信頼性を証明できる。これからの観光地域づくりは、プロモーションではなく、コンプライアンスを責任をもって開示していくというコミュニケーションの問題であるそうだ。

 

◼️サステナビリティ・コーディネーターの職務

久保氏は、「持続可能な観光」においてはコーディネーターが具体的な実務を通してコンプライアンスのレベルを高めていくことが前提であり、コーディネーターを地域につくっていかないわけにはいかないと考えている。

その中で取り上げられたスロベニアの例では、スロベニアが国家レベルで持続可能な観光の国際認証を取り入れており、そのプロセスにおいて観光地にコーディネーターを置くことが全てのスタートになっているということが示されていた。

質疑応答

Q.「釜石市での取り組みでは、市民の方に誇りを持ってもらうことを目的の中心に据えた」とのことだったが、久保氏の考える誇りとは?

 

A.郷土との向き合い方には色々なものがあり、「郷土愛」という言葉ではまとめられないと思う。釜石への誇りを持つにあたっても、決して釜石に住んでいることが必須ではないかなと。その土地に属しているということにアイデンティティがあれば、今自分がいる場所はどこでも良いと思う。

 

Q.「持続可能な観光の推進には人材が必要」とのことだったが、人手不足によりサステナビリティへの取り組みに辿り着かない地域は、そのままでも問題ない?それとも、今後のトレンドから取り残されてしまう危険性がある?

 

A.サステナビリティに取り組むことにどれだけの価値があるのかは、(久保氏自身にも)計りかねるところである。しかし、あらゆる法規制の動きや旅行者の意識の変容があるのは事実である。大手のツアーオペレーターも、これからはサステナビリティを共通言語として取り組んでいくかもしれない。そのため、全く取り組まないよりは取り組む方が機会損失は最小限に抑えられると思う。

 

Q.釜石市において、人材を補填できるような国からの支援や施策はある?

 

A.明確に支援する制度は官公庁にはない。なぜ釜石市がやってこれたのかというと、大元に地域おこし協力隊の制度があって、復興庁の支援で特定のプロジェクトに取り組むことができたことにある。そのため、地域おこし協力隊に取り組みたい自治体があるなら、サステナブルツーリズムの人材枠を作ると良いと思う。そうすれば、3年の間活動できるので、適切な理解を深めつつ地域に実務レベルで施策を実装できる。

 

Q.釜石市として関係人口への取り組みはあるのか?

釜石市は、市の戦略として比較的早い段階で取り組んでいた。釜石市民の中でアクティブな活動人口を増やしていったうえで、そのアクティブな市民の活動や社会課題の挑戦に触発を受けることで釜石市に主体的に関わろうと思うようになる人を増やす仕組み。

まとめ

久保様の講演を受けて、参加者からは「今まで持っていたサステナビリティツーリズムの概念が変わりました。」「久々にどっぷり観光の話を聞くことができ、自分がどれほど最先端の情報からアップデートできていないかをいい意味で思い知らされた。就職後、しばらく観光から離れていたが、改めて観光に携わりたいという思いが強くなるセミナーだった。」といった好評をいただきました。

 

私自身、近年トレンドに上がっている「サステナブル」といった用語の定義について理解が曖昧だったところがあり、釜石市の目覚ましい復興を成し遂げられた久保様による「持続可能な観光」や「サステナビリティ」の解説に、非常に学ばされることの多いセミナーだったと感じています。

 

今回の講演を快諾してくださった久保様、そして参加者の皆様、本当にありがとうございました!

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