こんなセミナーでした!
POINT1: インバウンド促進が、日本のまちと人々をもっと元気に、もっと魅力的に。
POINT2:富裕層が求めるのは「そこでしか味わえない本物の体験」
POINT3: 一過性ではなく、持続可能な観光に向け次のフェーズへ。
第69回MACHIBIYAセミナーは、日本政府観光局(JNTO)市場横断プロモーション部 、富裕層担当の小林大祐(こばやしだいすけ)氏にご講演いただきました!
日本政府観光局(JNTO)は日本政府の名でインバウンド誘致を行う唯一の組織です。小林様は以前旅行会社に勤めていたそうですが、現在はJNTOで「海外の方に日本の魅力を知ってもらう」という旅行会社とは反対のベクトルにあたる仕事をしています。
目次
インバウンドが、日本のまちと人を元気にする。
近年訪日外国人客数はどんどん増加し、2015年に45年ぶりに出国する日本人の数を抜きました。
そして2018年には、過去最高の訪日者数3,119万人に到達しています。
そんな今、なぜインバウンドなのか、そしてなぜ富裕層なのか。
インバウンドを促進する意義には、4つのポイントがあります。
1.草の根レベル(=政府や公的機関を介さない事)の交流が深まり、外交・安全保障の基盤となる。
2.少子高齢化時代にある日本で、高い経済効果を生む切り札に。
3.交流人口の増加により、雇用創出・地方創生に繋がる。
4.国民が地域の価値を再認識し、誇りと自信を取り戻す。
2047年には人口が1億人まで減少、40年後には生産年齢人口も半数まで減少する日本では、内需が落ちることは明らか。特にこの減少幅は地方で顕著であり、経済は弱まっていきます。
そこで大きな経済効果が期待できるのが、インバウンドによる消費なのです。
日本の定住人口1人分の年間消費額が125万円に対し、インバウンド1人当たりの旅行支出額は約15万円。
つまり、インバウンド8人分の消費があれば、定住人口1人分の消費を賄えてしまうのです!
そしてこの経済への効果の先に、地域産業の活性化、雇用創出、快適なインフラの充足といった地方創生があり、更には地元の人々が自信と誇りを取り戻すことにも繋がります。
なぜ富裕層なのか、富裕旅行者はどんな存在か。
2015年にピークに達した後、下降傾向にあるインバウンドの旅行消費額。
これを引き上げ、2020年に8兆円、2030年に15兆円という目標を達成するために、
日本は今「消費単価をあげる必要がある」というステージにあります。
富裕層は支出する余裕があり、良いものにはお金を落とすという効果に加え、その影響力の大きさから「社会で活躍し、マーケットにトレンドを作る」という二次的な効果も期待できる存在でもあります。
富裕層のマーケットとして一番大きいのはアメリカ。
そしてイギリス、イタリア、スペインなどのヨーロッパも総合ではアメリカに匹敵します。
日本政府は、1人1回あたり100万円を使う層をターゲットとして位置付けています。
では富裕旅行者とはどんな存在なのでしょう?
富裕層の志向、旅行タイプは多様化し、以下のように分類することができます。
All Luxuryの傾向が強いClassic Luxuryは信頼、特別感、王様のような豪華さや贅沢を好み、Selective Luxuryの傾向が強いModern Luxuryはモノより体験、現地ならではの体験を好みます。
「今までにない、本物の体験」を求める富裕層
では新しい富裕層が、旅行に求めるものはなんでしょうか?
「モノ消費からコト消費へ」とよく聞くように、今は本物の体験を求める人が多いのです。
Modern Luxuryの価値観が富裕層の中で大きくなっており、彼らは「食」「文化・伝統」「ホスピタリティ」といったコンテンツを求めています。
外国人の目から見て独特、神秘的に映る日本のおもてなしや食、生活は、戦える魅力です。これらをいかに魅力的に紹介できるかがポイントとなってきます。
では、富裕旅行向けコンテンツの評価ポイントとはなんなのでしょうか?
コアバリュー、バリュー提供の工夫、商品性というポイントをうまく押さえて、インバウンド誘致に成功した地域の事例はどんどん増えています。城崎温泉が欧米人に人気のある兵庫県豊岡市、農泊を活用した長野県飯山市、「里山エクスペリエンス」と題して農村風景が評価を得ている岐阜県飛騨市などが好事例です。
今ある観光資源を磨き上げて広域で連携しつつ、ターゲットを絞ってPRすることが地域ブランド構築に繋がっているのです。
インバウンドを促進しつつも、持続可能な観光に向けて。
人を呼び込むことに成功している一方で、新たな課題も生まれています。
それがオーバーツーリズムです。観光客が一気に増えたことで、環境破壊や交通渋滞など、地域の人をも巻き込む問題が次々発生しています。
一過性でなく、中朝的に継続する観光を実現するために、日本は人を呼び込みながらもSustainable Tourism(持続可能な観光)のための次のフェーズに向かわなければいけません。
グループワーク「浅草に富裕層を呼び込むためには」
今回のセミナーでも簡単なワークを実施しました。
内容は、上記のテーマに対し“食かアクティビティ”どちらかの視点を選んで班ごとに話し合い、各班がそれぞれ発表するというもの。
ここでは、アクティビティ担当班の一部発表をご紹介します。
アクティビティ担当班:
・人ごみを避けるために雷門、宝蔵門、本堂、五重塔を繋ぐ、普段非公開な地下通路を移動。
・貸し切りの寄席、寄席指導などの文化体験。
・熊手にお客様の名前を漢字で入れる。
・仲見世通りを100万円で貸し切って人力車で通る。
これらのコンテンツをうまく組み合わせると良いのでは。
小林さんからのフィードバック:
完成度の高いコンテンツですね。仲見世通りの貸し切りなど、大胆な発想は大事です。また、素材をうまく使って組み合わせて活用する、というのはビジネス的な観点で重要です。
質疑応答
Q.日本人にとって当たり前の魅力を探すのは難しい。見つけるポイントは?
A.大事なのは外国人目線です。DMOなどは外国人スタッフを雇い何が魅力的に感じるのかを聞いたり、彼らが何をSNSにアップしているかを調べたりしています。
Q.富裕層が情報を得るツールは何か。
A.富裕層は特に口コミが多い。世間一般のマスの情報ではなく、自分が認めている人、または自分と同じ水準のコミュニティ内で良いとされるものを評価します。PRする側としては、どうやって自分たちがそのコミュニティにPRできるかが重要であり、そこで影響力を持つインフルエンサーを通すなどしています。
Q.富裕層向けのコンテンツをつくる上でネックになっているものは?
A.言語対応などの受け入れ体制が課題です。また、富裕層の観点、国によって異なる観点に対応したサービスを提供するためのノウハウがまだ十分でないことも大きな課題です。
最後に
私は「旅行」という好きなことを仕事にしました。そしてお金が入ったり、社会から認められたりと、好きなことが昇華されていく体験をしてきました。
好きなことを仕事に、そして信念を持って仕事をしていけば、楽しんで社会人生活を送れることもある、ということを最後にお伝えしたいです。
まとめ
今回はJNTOから小林大祐さんをお招きし、インバウンドと富裕層をテーマに講演していただきました。
日本人からするとなんでもない田んぼの風景や道ばたのあまがえるですら、外国人にとっては新鮮で魅力的に見える、というお話がとても興味深かったです。インバウンドの促進で人を呼び込めうるというのは、少子高齢化の深刻な地方にとっても大きな可能性だと感じました。
観光資源の豊富な地域や都市はもちろん、そういった地方の小さなまちにこそ元気になってもらうために、外国人目線に立って魅力を発見し、発信することを大事にしていきたいです。
講師プロフィール
小林大祐(こばやしだいすけ)氏
日本政府観光局(JNTO)市場横断プロモーション部 富裕層担当 マネージャー代理
旅行会社にてアウトバウンドを中心に海外旅行商品の造成やロンドン支店への赴任等を経験したのち、2015年より日本政府観光局(JNTO)に入構。
シンガポール事務所赴任や九州運輸局派遣等を経て、現在は市場横断プロモーション部にて富裕層、中東市場、航空路線誘致等、市場横断的なインバウンドプロモーション事業に従事。外国人富裕旅行の市場規模や外国人富裕層のマインドなどについて豊富な知見を元に講演する。
その他参考情報
建築系の就活、何から始めればいいのか分からない。。。
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