MACHIBIYAセミナー

『世界に誇る観光立国へ~食文化から支えるインバウンド対応~』【第66回 MACHIBIYAセミナー】開催報告

 

こんなセミナーでした!

POINT1:ベジタリアンベースでフードダイバーシティを理解する

POINT2:今の料理をハラールアレンジ、ベジタリアンアレンジで提供する

POINT3:お店側の「できること」をしっかり伝える

POINT4:お客様の味覚、ニーズを知り「食べられる」以上のものを

第66回MACHIBIYAセミナーは、フードダイバーシティ株式会社代表取締役、守護彰浩(しゅごあきひろ)氏にご講演いただきました!

ムスリムの友人や同僚、世界一周をした経験から「なんでも食べられる日本人のほうが珍しい」、「ムスリムの人にとって日本で食べられるものが少ないというのはフェアじゃない」と気付いたのが今のビジネスの始まりです。

ムスリムやベジタリアンの方には、インバウンドはもちろん在住者も多くいます。在住者の方が安心できる環境を整えることで、インバウンドの方も自然と増えるでしょう。

 

 

 

日本における現状の問題
では今、日本でフードダイバーシティに関してどんな問題が起きているのでしょうか。

「旅行者と料理人の間に旅行会社と予約担当が入り、伝言ゲームとなって伝わらない」
「ムスリムやベジの方が食べたいものが分からない」
「情報が錯綜しすぎていて、何が正しい情報なのか分からない」
という3つの問題があります。

日本人がいくら「ハラール対応しています」と言ったところで、ムスリムの方は安心して食べられない状況なのです。

 

日本人によくある誤解とフードダイバーシティの考え方
そもそも、特定のものを食べられない理由は「アレルギー、食の禁忌、好き嫌い」の3つあります。そして一口に食の禁忌と言っても宗教、主義、病気と理由は様々です。

たとえば同じベジタリアンでも、ねぎやにんにくといった五葷の食材を食べられない台湾人のベジタリアンは宗教が理由ですが、欧米のベジタリアンに多いのは動物愛護や環境問題など主義が理由です。

日本人の多くはこの違いを理解できていません。フードダイバーシティの考え方を理解するには、ベジタリアンをベースに足し算、引き算をするのがわかりやすいです。

たとえばベジタリアンにハラール肉と魚介類を足し、アルコール成分の調味料を引いたのがイスラム教徒の食文化ということです。

日本人が、和食・洋食・中華・ハラール・ベジタリアンとジャンルを分類しているのは誤解です。ムスリムの方が日本に旅行に来たときに食べたいのは「ハラールアレンジをした和食、ベジタリアンアレンジをした和食」なのです。

「ベジタリアンにはサラダ、ムスリムにはトルコ料理やインドカレーを出せばいいのか」と思っていると、ランチに1万円の予算を持っているムスリムの人の実際のランチ代が、数百円になってしまいます。

ムスリムの人がと畜したハラール和牛を使った料理、国産の高級きのこの鉄板焼きを出すといった工夫で、ムスリムやベジタリアンの1人当たりの消費額を伸ばすことができるのです。現在、日本は消費額拡大の大きなチャンスを逃していると言えますね。

 

お店側がすべきこととは
ではここまでを踏まえて、解決策としてお店側にできることはなんでしょうか。

まず英語で情報を発信すること。これだけでお客様の選択肢が増えます。

フードダイバーシティと、食べられない理由を正しく理解すること。

そしてお店側のポリシーを提供すること。「どんな食材を使っているのか?原産国は?第三者機関の認証をうけているか?調理環境は?」といった情報と、写真も公開することでお客様は安心できます。このようにお客様の判断上材料となる情報を提供し、このポリシーを理解して来てくださる方をお迎えするだけでいいのです。

「美味しいものを食べたい」というニーズに応える
更にどんな層を狙うかで、戦略は変わってきます。たとえば、東南アジア系の普通層が今好むのは「ラーメンやお好み焼きのようなB級グルメのハラール対応された料理」、中国系ベジタリアンには「フェイクのこんにゃくマグロや大豆ベーコン」が好まれます。

美味しいものを提供しなければお客様は満足しない。そういう時代になっているのです。もう「Can eat」では満足しない、味覚やニーズをしっかり理解しましょう。

 

質疑応答
質疑応答では、フードダイバーシティ株式会社からミカイさん(マレーシア出身、日本在住5年目)にお越しいただき、生の声でお答えいただきました!

Q.日本に来て1年目、ハラールが少ないときは何を食べていましたか?

A.ミカイさん:スーパーで魚を買って自分で作っていました。外食は全然しませんでした。

A.守護さん:今は大阪にもハラール対応のラーメン店が4店舗ほどあって、彼女も「どこが美味しいだとか、今日はどこにしようだとかという話をしています。健全な市場になってきたと感じています。」

Q.ムスリムの方が食べてはいけないものを食べさせてしまった時の対応はどうしたらいいか?

A.ミカイさん:自分自身で「知らなかったせいだから」と納得できるので大丈夫です。

A.守護さん:「知らずに食べた場合は大丈夫」と啓典にもあります。知らずに食べた場合は大丈夫で啓典にある。食べさせた人に怒る人、わざとじゃなければ大丈夫だという人、お祈りして浄化する人などいろんな人がいます。

Q.日本で様々な食文化への対応が進んでいると思いますが、今後どのように変わっていってほしいですか。

A.ミカイさん:インバウンドでムスリムの人が増えていくと思うので、これからもハラール対応のレストランが増えていってほしいです。日本の方にムスリムを理解してもらって、仲良く出来たら良いと思います。

A.守護さん:彼女たちは日本文化を知って溶け込もうとしているのに、日本人側は理解しようとしていないように感じます。ヒジャブをかぶっていることや、ハラール料理に対して距離を感じずに対応していってほしいと思います。

Q.この日本料理、お菓子がハラール対応になってほしい!みたいなものはありますか?

A.ミカイさん:大抵のものがハラール対応してきたと思います。札幌味噌ラーメン、もつ鍋、味噌煮込み、和牛などなんでもハラール対応済みです。マレーシア人に「アルフォート」がとても人気で帰るときにたくさん買っていきます。

Q.食以外に関して対応してほしいことはありますか?

A.ミカイさん:ヒジャブをかぶっている人を見たら珍しがられたり、周りの人に変な風に見られたりしたこともありました。ムスリムをよく分かっていない人も多いので理解してもらいたいです。

A.守護さん:テロ関係の事件が多かった時期なので彼女たちを良く思わない日本人も多かった中、彼女たちはそれを理解してずっと住んでくれています。それは本当にすごいことだと思いますね。

MACHIBIYAインタビュー

Q.オススメの本は?

A.デービット・アトキンソン著『日本人の勝算』
日本在住30年以上のエコノミストが、日本を客観的に見た上で、日本人の耳に痛いようなことをズバズバ言っていてとても面白いです!

Q.オススメのまちは?

A.浅草
多くの地域がまだ「鎖国」している中、外国人が多く、他文化を受け入れる環境ができている場所です!

Q.大事にしている言葉は?

A.努力は結果を裏切らない
結果が出ない努力は努力じゃないと思います。

 

まとめ

今回は守護彰浩さんにご講演いただきました。

食の満足度が高いかどうかは旅行そのものの満足度に大きく関わり、食が充実しているかどうかは日常生活の体と心両方の健康に関わると思います。

飲食店やホテル、旅行代理店の方にこれから増えるだろうインバウンド、在住者の方に満足してもらえるフードダイバーシティの環境を整備していってほしいと思うと同時に、自分自身も他文化に対する正しい理解を深めていきたいです。

◇講師プロフィール

守護 彰浩(しゅご あきひろ)氏
千葉大学卒。2007年楽天株式会社入社、2012年独立しコンサルティング会社を設立。以前よりムスリムとの縁が多くあり、2013年よりハラールについての勉強するため、全国のモスク、国立大学を周る。2014年1月に日本国内のハラール情報を日本語、英語、インドネシア語、マレーシア語、中国語、アラビア語で世界に発信するポータルサイトであるHALAL MEDIA JAPANをサービスイン。2015年4月よりハラールレストラン検索サイトHALAL GOURMET JAPANをアプリと共にサービスイン。またハラールにおける国内最大級のトレードショー・HALAL EXPO JAPANを4年連続で主催し、国内外の事業者、及びムスリムを2万人以上動員。現場の具体的な事例やムスリムの生の声を届ける講演を全国で展開中。フードダイバーシティをコンセプトにハラールだけでなく、ベジタリアン、ビーガン、コーシャなどありとあらゆる食の禁忌に対応するコンサルティングを行う。流通経済大学非常勤講師も務める。

 

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