MACHIBIYAセミナー

【MACHIBIYAセミナー開催報告】観光(インバウンド)は地方創生の切り札になり得るか?

 『インバウンド観光は地方創生の切り札になり得るか - せとうちDMOが地域とともに目指す未来 - 』【2018/07/20】

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こんなセミナーでした!

POINT1 せとうちDMOはなぜNO.1DMOになりえたのか?
POINT2 いかにして地域を巻き込み進めていくのか?
POINT3 これからのDMOに必要とされるもの
POINT4 村橋様が今若者に伝えたいこと

 

第59回MACHIBIYAセミナーは、アートや世界遺産によるプレミアムな観光地として欧米豪からひとが集まり、国内で1番の成功事例と言われるせとうちDMOの責任者兼元じゃらん編集長でもある村橋克則本部長をお迎えして、観光とまちづくりの未来についてご講演いただきました。

なぜ今観光による地方創生なのか

日本において地域における観光のポジションはここ数年で大きく変化しつつあります。観光が日本を盛り上げる起爆剤になりつつあるのです。2003年に政府主導で行われたインバウンド政策は掛け声倒れに終わりました。理由は、観光が環境や治安の悪化を引き起こすと考えられ、地域住民に歓迎されなかったからです。当時の観光は旅館やホテルのみが携わるものだと考えられていたため、地域全体で環境や治安もひっくるめて推し進めていくという考え方がありませんでした。

しかし、日本は現在、少子高齢化、地域経済の衰退、地域存続の危機に面しています。今までの産業では乗り越えることが出来ないこの課題を、観光であれば乗り越えられるという期待感が高まってきています。より成功させるには、地域全体に観光が歓迎される必要性があります。

実際、観光による地方創生のメリットは数多く存在します。
① 域内売り上げの増加
経済圏内で「儲け」を生み出すことで、地域持続性を生み出すことが出来ます。

② 新しい商品・サービスの創出
商品とサービスが生まれる時、必ずそこには雇用が生まれます。更に、新しいものをより良くしたいというモチベーションが商品・サービスの質を向上させます。

③ 社会インフラの整備
観光客を誘致するためには、社会インフラが必要になります。観光事業を推し進めることで、インフラ整備のインセンティブになります。結果的に地元住民の生活の質も上がります。

④ 地域の伝統・文化・産業の保護、保全
一部地域では維持費が足らないため、文化財が壊されることもあります。観光資源として保護することで、保護・保全を行えます。

⑤ 住民意識の向上・プライドの醸成
地域住民の地元愛を醸成します。また、来訪客との交流による相互作用で新たな価値を創出します。例えば、ビアバレーにおける欧米豪富裕層の来訪客が増加したことで、地域に住まわれる高齢者の方の英語を学ぶ意識が向上した事例もあります。これは、ただ経済効果や雇用効果だけでなく、住民の多様な幸福感に応えられる要素もあります。

日本は観光に関してはまだまだ後進国です。ですが、観光には経済を活性化させるポテンシャルが数多くあります!!ようやく日本もこのポテンシャルに気づき始めたようですね!!

観光の経済効果・雇用効果

以下観光がいかにして世界の市場に影響を与えているかという数値です。

このように世界では観光が一つの重要な産業として考えられています。
一方、日本の観光市場はどうでしょうか?

日本の観光市場は、ここ数年で政府主導のもと急速に伸びてきています。その結果、インバウンドの経済効果は主要産業に匹敵するものになりつつあります。実際、2015年の訪日外国人の消費は3.5兆円、2020年には8兆円、2030年には15兆円を目指しています。

しかし、よく耳にするのが「インバウンド需要は東京オリンピックまでで、その後、需要は減っていくのではないか?」という声です。この考え方は間違っています。過去オリンピックを開催したギリシャ・中国・イギリスは、大会終了後もインバウンド需要は増え続けています。

こんな声も聞こえてきます。「観光業の恩恵は観光関連事業者だけではないのか?」そもそも観光産業には大きな波及効果があります。観光関連業者とは、スキー場前のコンビニ、インバウンドにサービスを提供する美容室、サイクルツーリズムのために自転車を運搬する業者、これらは全て間接的でありながら、観光関連業者です。

また、観光はビジター産業です。折角魅力がある観光地であっても、観光客に届かなければ何の意味もありません。情報を正確に届けるためにも、マーケティングは必要不可欠です。更に、仮に観光客が観光地を訪れてくれたとしても、お金を落とす仕組みがなければ地域経済は潤いません。今まで日本の地域観光は移動と見物中心だったため、仕組みづくりが急務です。

せとうちDMOについて

【せとうちDMOの歴史】

 

そもそも、瀬戸内地域は明治時代からトーマス・クックやリヒトホーフェンなど、世界の著名人から称賛される地域でした。また、松下幸之助も昭和28年の観光立国の提唱講演で富士山に並んで瀬戸内地域に関して言及しました。近年では、JTBにも富士山と瀬戸内地域を売るために設立されたという背景があります。

しかし、現在の瀬戸内海地域7県全体での外国人観光客訪問者数は福岡全体の数とほぼ変わりません。この危機を打開するためにせとうちDMOは立ち上がったのです。

【せとうちDMOとは】

一般社団法人せとうち観光推進機構として様々な機関や会社が参画しています。主に日本中、更には世界中の人々へのマーケティング活動、域内事業者への支援を担当しています。顧客の創造と地域の魅力向上を一体的に推進できる日本でも唯一のDMOです。DMOのMはManagementのMであるように、地域の住民や事業主のマネジメントを行い、事業運営、プロモーションを行っていきます。

【せとうちDMOのマーケティング例】

以下6つがマーケティングのポイントです。
① 競争が少なく、稼げる地域にアプローチする。
② 人がその地を知り、旅行するまでのフェーズを5段階に分け、それぞれのフェーズごとに施策を考案する。
③ 情報発信・レイアウトも国ごとに趣向があるので変える。
④ デジタルシフトを推し進め、トラベルサイクルに合わせていくつか動画を配信する。
⑤ 各国地域のマーケティングエージェンシーと契約し、地域に合わせたマーケティングを行う。
⑥ アジア国内向けでせとうちfinderを実施。

【プロダクト開発】

旅行消費額の4割が買い物とされています。そのため、お土産の開発に尽力し、900種類をせとうちブランドとして登録しています。
また、アクティビティの開発も同時に行い、22のプランを造成しました。

【開発支援例】

① ハイエンド向けクルーズ事業。
② 古民家宿泊事業に対する支援。
③ 地域開発会社の滞在型ヨットクルーズ。
④ 日本初の船上アイドルSTU48への出資。

地方創生のゴール

せとうちDMOが理想とする将来像、それは「地方創生(地域再生と成長循環)」の実現です。一過性の発展ではなく、地域が自立して永続的に成長し続けることが最大のポイントです。来たい人を増やす→泊まりたい人を増やす→再訪意向度を増やす→消費額を増やす→住民満足度を上げることが最終的なゴールです。そこに住む人が満足できなくては、持続的な成長は見込めません。

 

まとめ

村橋様から参加者の皆様にメッセージをいただきました。観光の語源は「国の光を見る」という言葉に由来している、地域の光である魅力を深く理解し、官民が共同で日本の未来を創っていくことが大切です。このメッセージで締めくくられました。一過性の観光ではなく、持続性を考えた地域を作ることが大切だと講演の中で感じられました。
講演後は積極的な質問が何個も出ました。中には自分の将来成し遂げたいことに対するアドバイスをもらうなど、セミナーの時間を更に有意義なものにしている方もいらっしゃいました。活発な議論が行われ、ただお話を聞いて終わりではなく、自分の考えを専門の方にぶつけてフィードバックをもらえる大きな機会になったと思います。次回は記念すべき60回目のセミナーになります。ぜひ一度足の方お運びください。

 

MACHIBIYAインタビュー

オススメの本は、「ドクターサーブ」(丸山直樹 著)というパキスタンで活躍した、目先の損得ではなく自分の使命をもとに働いた医師の話。「お金2.0」(佐藤航陽 著)という仮想通過などを含んだ、世の中の変化についてまとめた本です。

オススメの街は、「尾道」と「東北」と「鎌倉」と「奈良県戸津川村」

大事にしている言葉は、「未来を予測する最善の方法はその未来を自ら作り出すこと」

村橋 克則氏(一般社団法人せとうち観光推進機構事業本部長)

昭和62年(株)リクルート入社。
平成11年「おとなのいい旅」編集長・「じゃらんネット」開発責任者。
平成13年じゃらん編集局長。
平成15年じゃらん事業部事業部長。
平成17年リクルートメディアコミュニケーションズ執行役員。
平成19年株式会社オブリージュ設立。全国旅館衛生同業組合連合会公認コンサルタント、中小企業庁地域資源活用アドバイザー、山梨学院大学客員教授。
平成28年せとうち観光推進機構事業本部長

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