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【MACHIBIYAセミナー開催報告】『おしい!広島県』と『もうひとつの京都』観光キャンペーンの裏側

『おしい!広島県』と『もうひとつの京都』観光キャンペーンの裏側【2018/03/26】

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こんなセミナーでした!

POINT1:行政プロモーションで重視すべき「クリエイティビティ」
POINT2:人が集まるまちづくり
POINT3:地域で活躍するためのスキル

第54回MACHIBIYAセミナーは、今回は各地で話題を呼んだ行政プロモーション「おしい!広島県」と、「もうひとつの京都」を仕掛けた樫野 孝人氏をお迎えして、地方行政による広報戦略についてご講演いただきました。

「おいしい!」ではなく「おしい!」。広島県の戦略的PR活動

「おしい!広島県」は、同県が2012年3月から2013年7月まで展開した観光プロモーション。「おしい」は「おいしい」の一歩手前だとして、全国有数の観光資源を、自虐的に〈おしい〉と一歩引くことで逆に注目を集めました。毒舌タレントの有吉弘行さんを起用したことで全国的にも話題となり、ウェブサイト「おしい!広島県」はテレビ番組でも取り上げられるほど一躍話題となりました。。
これに関して、広島県庁公式サイトが平成24年全国広報コンクール・ウェブサイト部門で特選(総務大臣賞)を受賞するなど、高い評価を得た行政プロモーションの成功例として挙げられます。

この「おしい!広島県」が成功した背景にあるのは、マーケティング的視点を取り入れた「コンテンツ重視」の広報戦略にあります。

地方創生には「マーケティング視点」と「編集力」が必要

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プロモーションとは単なる「宣伝」ではなく、「地域の魅力を再発見し磨きなおすことと、多くの人に理解してもらえるよう翻訳すること」です。なかでも行政プロモーションにおいては「論理的思考で80点は取れる。それ以上を取るにはプロのクリエイティビティが必要」という企画方針が挙げられます。

人々が取得できる情報量は、社会に溢れる情報量のたった500分の1しかありません。ただ情報を発信するだけでなく、情報の価値や質の高い情報でなければ届けることができません。テレビ広告などをはじめとする有料媒体の価値が年々減少する一方で、ニュース性のある面白い企画は媒体側が無料で取り上げてくれます。

企画の面白さで話題をつくり、テレビ局側から取材をしてくれることがベストだと樫野氏は指摘します。これまでのメディア主導による広報から、いかに質の高い情報を提供できるかというコンテンツ主導の広報が重視されるようになっているのです。

また、よりよいコンテンツにするため、「おしい!広島県」では、「県庁→広告代理店→クリエイター」という広告代理店主導から、「クリエイター→広告代理店」というクリエイター主導へ切り替えたことで、より質の高いクリエイティブを生み出すことができ、結果としてキャンペーンを成功へと導きました。

行政プロモーションの収益性向上

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こういった行政プロモーションでは、「コストパフォーマンス」が軽視されがちになります。
コストパフォーマンスを重視し、「活きたお金の遣い方」を徹底するためには、民間企業と連携して行う「非予算事業」が有効です。
樫野氏が手がけた「おしい!広島県」では、ワタミとのコラボ企画により広島県産の牡蠣やタコを安定的に出荷することで、PR効果以外にも経済的な利益を得ることができました。こうした予算外の収入を得られる非予算事業は、予算が限られている地方自治体にとって非常に有効な手段なのです。広報における基本的な軸さえあれば、あとは関連事業がうまく仕組み化されていくことで、より大きな成果が挙げられます。

広域連携で魅力の増大を図る

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地域創生のために、地方自治体はもちろん自身のまちをアピールしますが、周辺のまちも併せてアピールすることはごく稀でしょう。しかし、観光客が大阪に行く計画を立てていたとして、頭の中で周辺の京都にも行こうという考えを持つ人も少なくありません。
これを鑑みると、周辺地域が広域連携によってプロモーションを展開することにより、より広い対象に対して魅力を発信することができます。観光戦略に行政の垣根は必要ありません。樫野氏は現在この考えを基に神戸パートナーシップ構想を提案し、周辺を取り込んだアピール事業に取り組んでいます。遊学動住で人が集まるまちに。これが樫野氏の描く地域創生のエンジンです。

「かもめ地域創生研究所」が目指すまちづくり

かもめ地域創生研究所とは、各自治体の首長や地域行政をサポートするため樫野氏をはじめとするリクルートOBを中心として結成された団体です。同研究所は首長を100人輩出するためのヒト、モノ、カネ、情報を総合的に支援し、人材紹介、講演などを通じて地域コンサルティングをサポートしています。

かもめ地域創生研究所が目指すのは、マーケティング的視野を取り入れたまちづくりを戦略的に展開することができる人材です。

地域で活躍するために求められる力

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これからのまちづくりに求められる重要なポイントとして、樫野氏は「広域連携で魅力的な地域をそろえる」ことと、「他都市と比べて競合優位性を意識する」の2点を挙げています。

第一に、広域連携によって魅力的な資源を多数揃え、その資源に物語性を付加することで価値の上昇をはかります。このとき「編集」の観点を持って、いかに魅力的に感じてもらえるかを構成していくことで、より質の高いプロモーションを展開することができます。

第二に、他都市と比較しての競合優位性を意識することで、一点集中型のプロモーションが実現させることができます。ターゲットを明確化し、広報のメインとなるものを定格化することで、他都市との差別化を図ったその「まちらしさ」は、唯一無二の価値を想像します。このとき、顧客視点、市場視点を重視することが重要です。この「マーケティング」力によって、より人々に響く行政プロモーションを展開することができるでしょう。

そして、これらを実現するための「編集力」と「マーケティング力」を身につけることが、地域で活躍する人材に求められると樫野氏は指摘しています。

まとめ

樫野氏の止むことのない好奇心とユーモア溢れるトークで会場全体が元気になれる、勇気づけられる講演でした。これからも日本のまちを元気にする開拓者として日本人を引っ張っていてくれるその背中を、私たちも追いかけていきたいですね。

MACHIBIYAインタビュー
オススメの本は、「仕事は楽しいかね」と「ニワトリは殺すな」。
オススメのまちは、「神戸・福岡・淡路島」
大事にしている言葉は、「やらずに後悔するより、やって後悔する」

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樫野 孝人氏(兵庫県議会議員 / 株式会社CAP代表取締役)

1963年生まれ。神戸大学経済学部卒業。
㈱リクルートで人事、雑誌編集長、福岡ドームでイベントプロデュースを担当後、2000年㈱アイ・エム・ジェイの代表取締役社長に就任し、ジャスダック上場。国内最大手のweb構築企業に成長するとともに、「NANA」「るろうに剣心」などのヒット映画も製作。
広島県庁で企画した「おしい!広島県!」と京都府庁で企画した「もうひとつの京都」でショートショート・フィルムフェスティバル&アジアで観光映像大賞(観光庁長官賞)を2度受賞する。2013年神戸市長選挙に立候補。156214票獲得するも5675票差で惜敗。現在、㈱CAP代表取締役社長、神戸志民党 代表、兵庫県議会議員。著書に「無所属新人」「地域再生7つの視点」「おしい!広島県~広島県庁の戦略的広報とは何か?~」「人口減少時代の都市ビジョン」など。(2018年3月現在)

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