目次
地域の魅力を編集するチカラ~映画・特産品開発等を事例に~【2017/6/9開催】
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こんなセミナーでした!
POINT1:地域の魅力をどのように見せるか?
POINT2:映画で地域を盛り上げる!
POINT3:特産品をプロデュース!
「じゃらん」編集で学んだビジネスの基礎
第46回MACHIBIYAセミナーはアジア・メディアプロモーション 代表取締役の渡邊 竜一氏にご講演頂きました。
渡邊氏は旅行情報誌「じゃらん」の編集をされていた経歴があり、担当当時のじゃらんにおけるターゲットは「女子大生」だったそうです。ターゲットとターゲットのニーズをマッチングさせるために誌面は目的別に編集されていて、「誰と」「何をするか」という本当の欲求を満たすための提案をされていました。
これまでは“いい観光資源があるから来てください”という「プロダクトアウト」視点でしたが、ターゲットの「あるテーマ」を解決する資源の提供をする「課題解決型の情報発信」への視点が必要とのことです。
地域の観光資源の整理
観光素材の情報は、
・発地情報
・着地情報
の2つに分けて整理することができ、訪れたくなる動機付けの情報と訪れた時の満足度が上がる情報に合わせ、それぞれの合わせた発信ツールを選ぶことが重要です。
それらに加えて、夜景見学や温泉卓球など、泊まらないと体験できない「宿泊型観光素材」を発掘し、滞在効果向上を図ることで、その土地に経済効果をもたらすことができます。
また、既存の観光素材をあるテーマで括ってみることで、バラバラだった素材が一つの課題を解決する魅力ある資源となって、大きなテーマを打ち出すことができます。
さらに、様々な角度からもアプローチ方法を検討しなければなりません。
「性別によるアプローチ」「ブームに連動したアプローチ」など、情報発信の仕方を工夫する必要があります。
そして、全国各地でもこれまでは「交通」「宿泊」など、地元に落ちにくかった産業のアピールをしていましたが、DMO(DMC)の活動もあり、地域への経済効果を生みやすい「飲食」「土産」「体験」などを積極的に外に発信しています。
※DMOとは、観光物件、自然、食、芸術・芸能、風習、風俗など当該地域にある観光資源に精通し、地域と協同して観光地域作りを行う法人のこと。
映画・ドラマを使った地域観光資源とPR
映画(映像)によって、地域資源の再発見をしようと考えました。
意外と地元の人でも気づいていない良さがあると思いましたし、本当の価値は客観視した方が良いんじゃないかとも思いました。そして、外から地元を評価されると、自分たちも“価値を見直すきっかけに繋がる”という流れです。
そして“映画”は地方の人々にとって遠い存在であるがゆえに高い興味を引くものであるし、映像の伝える力もとても強いものとなっています。
映画によって得られる効果としては、
・制作費用効果
・広報効果
・ブランド効果
・地域のアイデンティティ向上効果
・地域参加意識向上効果
・観光・物産等2次的効果
があります。
しかし、これらの効果を意図的に地域活性に活かすには、“従来にない新たな仕組み”が必要となります。
ここで映像による経済効果の例を紹介したいと思います。
みなさんは2004年にブームになった韓流ドラマ「冬のソナタ」をご存知ですか?
このドラマの効果により、日本人観光客が7ヶ月間で18万人増加、観光収入は約300億円と言われています。
日本を代表するロケ地観光地域としては、北の国から(北海道富良野市)、男はつらいよ(東京都葛飾区)があります。
次にこれまでプロデュースしてきた映画の事例を紹介いたします。
中国映画「狙った恋の落とし方」
北海道・道東エリアで撮影し、中国で公開。
劇場で約2,500万人、その後DVD、テレビ放映で約3億人以上が観た大ヒット作品。
これを観た中国人が北海道に押し寄せ、観光ブームを引き起こしました。日本国内でも公開し、中国人観光客への受け皿づくりをするという仕掛けを実施。
大舘・北秋田発映画「ハナばあちゃん!!」
東京と秋田の合同体制で製作。
地域を誇りに思ってもらうために製作した地元参加型映画。
プロジェクトスタート時から地元新聞がフォローし、掲載回数は300回超え!
映画製作プロセスのすべてに地域が関わることで、その土地では知らない人がいない状態に。そして、映画そのものも“地域特産品”として残る仕組みになりました。
名護市の魅力づくりの映画化事業「がじまる食堂の恋」
名護市の「名護大通り」(シャッター街)を活性化するという目的で製作。
映画による地域PRで大事なのは見ている人が感情移入することなので、ヒューマンタッチのストーリーが上手な監督に製作を依頼。
そして、「これこそ名護!」というコンテンツを地元の人たちが自ら考え、映像に反映させています。
また、まちを巻き込む企画としては、
「レッドカーペットを敷き、映画の世界観を演出」「応援のぼりの設置」「市民オーディション」「地元大学との提携」などを実施。
そして昨年は秋田をタイ向けのドラマ「スッタ―イナ アイオン」製作。
タイで有名な女優さんをキャスティングし、FacebookやPANTIPで口コミなどを利用し、約2,400万人ものアクセスがあったそうです。
これからは朝ドラや大河ドラマの誘致を狙っていきます。
食を武器にまちの活性化と海外戦略に取り組む地方銀行
渡邊氏は“食”というテーマでも地域活性をされています。
プロデュースされた商品に「青豆のドラジェ」があります。
秋田が県として一押しの商材である枝豆を広く売り出すための商材として、開発しました。
パッケージを少し垢抜けたものにしたり、有名なパティシエとコラボしたりすることで売り場を広げていきました。国会でも付加価値をつけた6次産業の事例として、紹介されています。
次にプロデュースしたのは、「シロクマヌードル」です。
秋田県の男鹿水族館で白くまの赤ちゃんが誕生したことを機に、北海道円山動物園の白くまラーメンにヒントを得て開発しました。
秋田県は2次加工品が弱いので、加工品をつくることで、工場の拡大や融資を促していきたいと考えています。
地域の魅力を編集する
地域には行政、金融、企業、住民、メディアなど、多くの要素が絡んできます。それぞれの主張や考えが行き違い、コミュニケーションの動脈硬化を起こしていることが実情です。
これらを解決し、地域活性をしていくためのきっかけとしてはメディアによるキーマンの活動の後押しが重要です。そしてそれを支える賛同者や多くの人を巻き込むことで、まちのベクトルを統一させ、ターゲットをはっきり見据えた“編集力”が必要とされています。
まとめ
渡邊氏は「映画」や「特産品」など、私たちの身近で目に見えるものを使って、地域活性に繋げている事例を紹介してくれました。セミナー内では、渡邊様がプロデュースした映画のプロモーション動画も見せて頂き、その風景の中にある地域に魅力を感じる場面も。
そして、講演の最後には「未来を予測する最善の方法は、それを発明してしまうこと。」というアラン・ケイ(学者)の言葉を伝えてくれ、「先が見えない」と不安になるのではなく、能動的に動く大切さを教えていただきました。
講師プロフィール
渡邊 竜一氏(株式会社アジア・メディアプロモーション 代表取締役)
神奈川県出身。
㈱リョケンのハウスエージェンシーにて日光・鬼怒川の旅館の販売促進を手掛けた後、情報誌「じゃらん」「ゼクシィ」等の編集、読者向けのイベント企画・運営を経て、株式会社リクルート地域活性部契約プランナーとして様々な観光地域活性事業に従事。
その後映画やドラマのロケ地を紹介する情報誌「ロケーションジャパン」の創刊編集長を務め、中央省庁、都道府県等の観光アドバイザー、委員を歴任。徳島県上勝町の「いろどり」事業アドバイザーのほか、福島こどもみらい映画総合監修、秋田大館市活性化映画「ハナばあちゃん~わたしのヤマのカミサマ」を企画製作、北海道への中国観光ブームを作った映画「狙った恋の落とし方」日本配給をプロデュース、沖縄県名護市の観光交流促進を目的とした映画「がじまる食堂の恋」を製作するなど映画を活用したロケ地観光等を推進。
また、秋田県の地元銀行理事として政・官・学・民・金の連携による基幹産業活性化の取組みを展開中。
オススメのまちは路面電車が残っているまちや城が残っているまち。なぜなら、まちの人々の気持ちが揃っていたからこそ残されている歴史や文化があるから。
オススメの本は、小説 「後藤新平―行革と都市政策の先駆者」 (2017年6月時点)
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