こんなセミナーでした!
POINT1:日本人に喜んでもらえるものは、訪日外国人にも喜んでもらえる時代。
POINT2:何が必要?何に困る?相手の立場になればわかる。
POINT3:日本のいいところ、もっと訪日・在日外国人に聞こう!
第70回セミナーはインバウンドマーケティングサービスを展開する『DeepJapan』エディトリアル・ディレクターであるは萩本良秀(はぎもとよしひで)氏にご講演いただきました!
みなさんは、道で困っている外国人に話しかけたことがありますか?
どうやって英語を学んでいいかわからない、話しかけるのをためらってしまう、という方、いらっしゃいますよね。
でも、彼らに話しかけることは無料のネイティブレッスンです!
1日1回、道案内してみましょう。明日からみなさんが気軽に声をかけられるように、「今時の外国人旅行者とは?」ということを今からお話します。
目次
数年で大きく変化してきた日本のインバウンド
訪日外国人の数はいまや震災の年の5倍になり、消費額も年々増加しています。
観光庁が訪日外国人の動向を知るために年4回行っている定量調査から、最近の特徴を見ていきましょう。
観光・レジャー目的(ビジネスでの訪日などを除く)の訪日外国人には、どんな変化があったのでしょう?
まず来日回数に関しては、なんと3年前に初来日の人よりリピーターのほうが多くなっているのです。その中でも過去1年以内に日本を訪れた人は4割近くを占め、韓国や台湾など近隣国の人にとってはかなり気軽な感覚で訪れていることがわかります。
滞在中にあると便利な情報に関しては、Wi-Fiが5位となっており、これはかなりWi-Fiの提供が普及して便利になってきたことを示します。
一方、1位になっているのは交通機関です。
リピーターが増えると、“よりディープな日本”を求め、目的地の嗜好が段々と地方になっていきます。
しかし、今の交通機関には十分な英語表記は決して多くはありません。
だからこそ、交通機関の利便性を求めるようになってきたのですね。
インバウンド旅行者にとっての日本の魅力
彼らは、一見観光とも思えないこともやりたいと思っています。
まず彼らが「買いたい」ものから見ていきましょう。
桜の模様が入った包丁は、日本らしい柄とその切れ味が人気です。
地域限定がどこの国よりも多い日本の各地で、地域限定のお菓子を買う旅行者も多くいます。フリクションなど、多品種を取りそろえた文房具はかなり人気のお土産ですね。
飲食でいえば、渋谷飲んべえ横町や新宿ゴールデン街などが人気を博しています。
あらかじめ外国人向けではなかったところに人気が出ている、という特徴がわかります。
次に、彼らが「知りたい」日本についてです。
よく外国人はマナーが悪いと言われますが、彼らはそもそもマナーを知らないのです。
居酒屋の座敷にあるお手洗い用のスリッパの使い方や、神社や寺でのお祈りの仕方の違いなど、文化の違いを理解し、活用できるような知識を教えてあげると、向こうも喜んでくれるのです。
更に彼らが「感心する」ことについてですが、たとえば、雨が降ると店先にさっと用意される傘カバーに、とても感動する外国人もいます。
始めから外国人向けのおもてなしを考えるのではなく、どうやって見られているかが重要なのです。
自国でできない体験をしたがる観光客は、だんだんと現地の日本人と同じような体験をしたがるようになります。
日本人が喜んでくれるものは、同じように外国人にも喜んでもらえるかもしれない時代である、ということです。
相手の立場になって考えること
外国人が不便に感じるのは、どんなことでしょう。
駅で自分がどこの駅にいるのかわからない人、ネットで何か探そうにも日本の地域表示がわからない人、など言葉が読めない、地理がわからないので、情報が探せずに困っている外国人が多くいます。
あなたも似たような経験をしたことがありませんか?
例えば福島県に旅行に行ったとします。
東京生まれ東京育ちのあなたは、福島のどこが中通りでどこが浜通りなのか、すぐに判別できますか?
分からない人がほとんどなのではないでしょうか。僕は正直分かりません
外国人にとっても同じなのです。
彼らにとって、東北地方、甲信越地方といった地域表示はわからないもの。
Kanto(広域)と書くよりTokyo(境域)と書く、Yamanashi(行政区分)と書くよりMt. Fuji(ランドマーク)の様に、
日本人にしか分からない地域表示と外国人にも伝わる地名表示を適切に区別する必要があります。
また、翻訳された情報にも困る人がいます。
たとえば、風鈴について日本語の情報をそのまま翻訳しても、風鈴を見たことがない外国人にはなんのことだかわかりません。ただ直訳をするのでなく、外国人にとって有用になる情報にしたうえでの翻訳が必要になります。
上記の様に、相手の立場になって自分が困るであろうことを考えれば、訪日外国人が何を不便に感じているかもわかるのです。
外国人視点の日本の魅力を教えてくれる、日本大好き外国人に聞く
それでも外国人のことがわからない、何をしていいかわからない、という方はいらっしゃいます。そこで活用できるのが、インターネットから得られる情報です。
Trip AdvisorやFacebookから、流行っているお店や場所の情報を仕入れたり、口コミからお店がどんな評価をされているかを知ったりすることができますよね。
日本のことが好きで日本に訪れる人や、日本に住んでいる人はいいところもたくさん知っています。気がつかなかった魅力や実際の不便も知るために、もっと外国人に聞いてみましょう。
私は「通訳案内士」という国家資格をインバウンドに役立てています。
1日3万円などでプライベートガイドを行うことも多く、言葉で説明する能力と同時に、旅行を食い建てるための知識や土地勘、そして雑談力が必要な仕事です。
訪日外国人向けに新しいサービスを作る必要はなく、昔からあるものを英語で伝えていくことがインバウンドです。日本にチャンスがある今、私はインバウンドに挑戦することが自分のミッションだと考えています。
インターネットがある今、自分がやりたいことを引き寄せられる時代です。
みなさんも自分のミッションを見つけ、挑戦していってください。
質疑応答
Q. 地方でのサービスを充実させることで、理想の観光地、持続的な観光地になるのか。
A. 何においてもそうだが、新しい問題が出てくるものです。観光でいえば、オーバーツーリズムですね。課題に終わりはなく、前進した分だけ課題は出てくるので、それに向けて取り組み続けることができるかということが大事です。日本は、スイスやスペインのバルセロナのような先進例の取り組みを手本にすることができます。それを続けることで、インバウンドは日本で最大の外貨を獲得できる産業になりうる、と私は楽観的に信じています。
Q. 雑談力を向上させるためにできることは?
A. 外国語の雑談力と、日本語の雑談力はあまり変わりません。日頃から周りのことに対して、何か気が利いたことを言おうとするなど、日本語の会話の中でやることがそのまま英語でもいかせるでしょう。
Q. 英語表示の看板を増やしたことが景観を損ねるなど、ネガティブな結果も生みかねないが、「相手の立場になること」の良い塩梅はあるか。
A. 要は「余計なお世話」ということはありえます。たとえば、京橋の天ぷら屋で外国人向けにと思って天ぷらをカットして提供したが、外国人にとってはそのサービスは不服だった、という場面にあったことがあります。今の時代、調べる情報源はインターネットでいくらでもあり、調べることで「余計なお世話」を事前に回避できると考えます。
Q. 通訳案内士をやるうえで、雑談以外にも磨いた方がいい力はあるか。
A. 端的に言うと、会話の中で自分の得意なものを使えるようにすることですね。たとえば、商社出身でグローバルな見識がある人は、自分の経験から文化の違いを話すことができます。私の場合は、音楽が大好きなので、いろんな話を音楽に絡めています。海外旅行にあまり行ったことがなくても、盛り上がる共通の話題を作ることはできます。
最後に
様々なところで講演をしますが今日は学生が多いということで、テーマに興味のある学生が真剣に吸収しようとしているのがわかって良かったです。
社会人になっても、いろんなことを吸収していける人間が勝ちです。
是非その姿勢を続けていってください。
まとめ
今回は萩本良秀さんをお招きし、インバウンドのいろはをテーマに講演していただきました。
訪日外国人が求めているものはなんだろう、と相手の立場になって考えること。日本に魅力を感じる外国人に聞いてみること。一緒に盛り上がれる共通の話題を探すこと。たくさんのポイントをお話していただきましたが、コミュニケーションに大事なことに言語は関係ないのだと感じました。
1日1回道案内。これは、訪日外国人に日本の滞在をより楽しんでもらう助けになりうるし、自分もその出会いを通して気がつかなかった日本の魅力などを日々吸収することができる、素敵な習慣ではないでしょうか。是非明日から、物怖じせずに実践していきたいです。
講師プロフィール
萩本 良秀(はぎもとよしひで)様
株式会社ゼロイン DeepJapan.org エグゼクティブ・ディレクター
1988年リクルート入社。「ISIZEじゃらん (現じゃらんnet)」初代編集長。「じゃらんガイドブック」編集長。ぴあ「@ぴあ」編集長、ヤフー「Yahoo!ニュース」プロデューサーなどを経て、2013年より数百人の日本在住多国籍メンバーが、日本旅行のアドバイスを投稿するサイト「DeepJapan」エグゼクティブ・ディレクター。14年「Mt. Fuji Travel Guide」電子書籍世界発売。全国通訳案内士 (英語)。国内旅行業務取扱管理者。山梨県観光部公認やまなし大使。宣伝会議「訪日外国人向け制作ディレクション講座」をはじめ自治体や観光関連団体主催のインバウンド関連イベントや研修での講演、講師など多数
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